33.コンピュータ使用医薬品等製    造所適正管理ガイドラインに    ついて 平成4年2月21日 薬監第11号 厚生省薬務局監視指導課長から 各都道府県衛生主管部(局)長宛 改正 平成6年3月31日  薬発第333号 近年,コンピュータを利用した製造管理及 び品質管理を行う医薬品又は医薬品の製造原 料の製造所が急速に増加している。  このような現状に鑑み,今般,別添のとお り「コンピュータ使用医薬品等製造所適正管 理ガイドライン」を定めたので,貴管下関係 製造業者に対して周知徹底を図られるようお 願いする。 コンピュータ使用医薬品等製造 所適正管理ガイドライン 第1 目的  このガイドラインは,「医薬品の製造管理及 び品質管理規則」(平成6年厚生省令第3号) (以下「医薬品GMP」という。)が適用される 製造所において,製造工程の制御及び管理, 生産管理,品質管理等のためのシステム(コ ンピュータ及びこれにより制御されている機 器及び設備をいう。以下同じ。)を開発し,及 び利用する場合の遵守事項を定め,医薬品 GMPの適正な実施の確保を図ることを目的 とする。 第2 適用の範囲  このガイドラインは,医薬品GMPが適 用される製造所のうち,次のいずれかに該当 するシステムを使用する製造所に適用する。 ただし,使用目的が限定され,そのためのプ ログラムがハードウェア(コンピュータによ り制御される機器及び設備を含む。以下同 じ。)の提供業者によって汎用機能として固定 され,パラメーターを設定することによって 機能が実現されるシステムを除くものとする。  (1) 製造工程を制御又は管理するためのシ   ステム及びその管理データを保存管理する   ためのシステム  (2) 原料及び製品(製造の中間工程で造ら   れるものを含む。以下同じ。)の保管,出納   等の生産管理をするためのシステム  (3) 製造指図書,試験検査実施計画書又は   記録書類を作成するためのシステム  (4) 品質管理のためのシステム及びその管   理データを保存管理するためのシステム 第3 開発業務 1.開発検討段階  (1) 開発段階の責任体制の確立   ア 製造業者は,「2.システム設計段階」   から「5.設置・運用テスト段階」までの   各開発段階ごとに責任者及び担当者を定   めるものとする。ただし,同一の者が,   複数の開発段階の責任者又は担当者を兼   務することは差し支えないものとする。   イ 責任者は,担当者の業務分担を定め   るものとする。  (2) 開発マニュアルの作成   製造業者は,開発マニュアルを作成する  ものとし,原則として次の事項を記載する  ものとする。   ア システム開発の手順   イ 各開発段階ごとに作成すべき文書及   びその管理方法   ウ 各開発段階の業務完了の確認又は承   認の手続き   エ 開発マニュアルの改訂又は廃止の手   続き (3) 開発計画書の作成   製造業者は,開発計画書を作成するもの  とし,原則として次の事項を記載するもの  とする。   ア 開発の目的   イ 開発スケジュール   ウ 要員計画   エ ハードウェアの選定基準   オ ハードウェアを設置するための設備   整備計画 2.システム設計段階  (1) システム設計書の作成   製造業者は,システム製造書を作成する  ものとし,原則として次の事項を記載する  ものとする。   ア ハードウェアの構成   イ システムの機能の概要   ウ 入出力情報の項目の一覧   エ ファイル構成の概要   オ 障害対策機能の概要   カ 機密保護機能の概要   キ 責任者及び担当者の職名又は氏名  (2) システム設計書の確認   責任者は,システム設計書が開発マニュ  アルに定められた手順に従って作成されて  いることを確認するものとする。 3.プログラム設計段階  (1) プログラム仕様書の作成   責任者は,担当者にプログラム仕様書を  作成させるものとし,原則として次の事項  を記載するものとする。   ア 入出力情報の詳細   イ データ処理の詳細  、   ウ 責任者及び担当者の職名又は氏名  (2)プログラム仕様書及びプログラムの確  認   ア 責任者は,プログラム仕様書がシス   テム設計書に従って作成されていること   を確認するものとする。   イ 責任者は,プログラムがプログラム   仕様書どおりにプログラミングされてい   ることを確認するものとする。  (3)プログラムテストの実施   ア 責任者は,担当者にプログラムテス   ト方法及びプログラムテスト結果の判定   方法を記載したプログラムテスト計画書   を作成させるものとする。   イ 担当者は,プログラムテスト計画書   に基づき,プログラムテストを行い,そ   の結果を記録するものとする。   ウ 責任者は,プログラムテストの結果   の適否を判定し,適切であると認められ   る場合には承認するものとする。 4.システムテスト段階  (1) システムテスト実施計画書の作成   責任者は,担当者にシステムテスト(シ  ステムが,プログラムをコンピュータに読  み取らせ,かつ,実際の生産は行わない状  態で,設計した仕様を満足する動作を示す  ことを確認するためのテストをいう。以下  同じ。)実施計画書を作成させるものとし,  原則として次の事項を記載するものとする。   ア システ厶テストの実施環境(テスト   時のハードウエアの接続状況及びプログ   ラム構成等をいう。)   イ システムテストの項目及び使用する   テストデータ   ウ システムテストの方法及び結果の確   認方法   エ システムテストのスケジュール   オ システムテストを実施する場合の業   務分担  (2)システムテストの実施   ア 担当者は,システムテスト実施計画   書に基づいて,システムテストを実施し,   その結果(システムテストの実施時に発   生したトラブルの内容及びその措置内容   を含む。)を記録するものとする。   イ 責任者は,システムテストの結果の   適否を判定し,適切と認められる場合に   は,承認するものとする。この場合にお   いて,システムテストの結果の適否の判   定事項は,原則として次のとおりとする。  (ア) 機能(システム設計書に規定された   とおりに機能するか等)  (イ) 性能(システム設計書で期待された   応答性を確保しているか等)  (ウ) 信頼性(リカバリ機能は正常に作動   するか等)  (エ) 操作性(端末機の操作性は適切か等) 5.設置・運用テスト段階  (1) 設置計画書の作成   責任者は,担当者にハードウエアの設置  計画書を作成させるものとし,原則として  次の事項を記載するものとする。   (ア)設置場所   (イ)設置のスケジュール   (ウ)ハードウエアの提供業者が推奨する   温度,湿度,振動等の環境条件   (エ)電源,接地等の据え付け条件   (オ)責任者及び担当者の職名又は氏名  (2) ハードウェアの設置   ア 担当者は,設置計画書に基づいて,   ハードウェアを設置し,適切に設置され   ていることを確認し,その結果介記録す   るものとする。   イ 責任者は,ハードウェアの設置の適   否を判定し,適切と認められる場合には,   承認するものとする。  (3) 運用テスト実施計画書の作成   責任者は,担当者に次の事項について記  載した運用テスト (システムが,稼動時の  環境下において,設計した仕様どおりに生  産及び管理を行うことができることを確認  するためのテストをいう。以下同じ。)実施  計画書を作成させるものとする。   ア システムの稼動時における機能及び   性能の確認方法   イ 運用テスト実施結果の解析と評価の   方法  (4) 運用テストの実施   ア 担当者は,運用テスト実施計画書に   基づいて運用テストを実施し,その結果   を記録するものとする。   イ 責任者は,運用テストの結果の適否   を判定し,適切と認められる場合には,   承認するものとする。 6.その他  「第3 開発業務」の全部又は一部を他社に 委託した場合には,当該業務に係る文書を委 託先他社から入手して保存管理を行い,又は 委託先他社によって適切に保存管理が行われ ていることを確認するものとする。  ただし,「4.システムテスト段階」又は 「5.設置・運用テスト段階」の業務を他社に 委託した場合には,当該業務を監督する責任 者を定め,その責任者を当該業務の実施に立 ち会わせ,当該業務の結果の適否を判定し, 適切と認められる場合には,承認させるもの とする。 第4 運用管理業務 1.総則  (1) 運用管理段階の責任体制の確立   ア 製造業者は,「2.ハードウェアの操   作」から「6.自己点検の実施」までの各   運用段階ごとに責任者及び担当者を定め   るものとする。ただし,同一の者が,複   数の運用段階の責任者及び担当者を兼務   することは差し支えないものとする。   イ 責任者は,担当者の業者分担を定め   るものとする。  (2) 運用管理手順書の作成   製造業者は,運用管理手順書を作成する  ものとし,原則として次の事項を記載する  ものとする。   ア ハードウェアの操作に関する事項   (ア)ハードウエアの標準操作手順   (イ)担当者の教育に関する事項   イ 保守点検管理に関する事項   (ア) 定期点検事項     (i)プログラムが適正に使用されて     いることの確認     (ii)システムが設計された仕様どお     りの機能及び性能を満たして作動し     ていることの確認     (iii)必要に応した測定機器の校正の     実施   (イ) 日常点検事項     (i)作業室の環境条件の維持     (ii)作業前及び作業後の点検の実施     (iii)入力データの点検   (ウ) 専門的知識を有するものにより行    われるべき点検事項   ウ 事故発生時の対応措置に関する事項   (ア) システムの警報発信条件   (イ) システム停止条件   (ウ) 事故発生時の対応のための組織等     (i)組織図     (ii)責任者への報告事項   (エ) 回復措置に関する手順   (オ) 原因追及に関する手順   (カ) 再発防止措置   (キ) 事故又は障害の発生時における製    品等に対する影響についての調査事項   (ク) システム停止後の再開手順及び再    開時の確認事項   (ケ) 手動バックアップシステムを必要と    する場合の手順等     (i)手動で制御できる装置の範囲     (ii)手動制御に移行する場合の基準     (iii)手動バックアップが適正に作動     することの確認事項(相関性の確認     を含む。)     (iv)手動バックアップのための訓練     に関する事項   エ セキュリティ管理に関する事項   (ア)ハードウエア設置場所への立入制    限に関する事項   (イ)データの入力,修正,削除等を行    うことのできる担当者の指定と不正ア    クセスの防止に関する事項   (ウ)パスワード,識別コード等の管理    に関すること     (i)パスワード識別コード等の登録,     変更及び抹消の手続き     (ii)パスワード識別コード等の開示     の禁止に関すること     (iii)パスワード識別コード等の担当     者変更時の取扱いに関すること   (エ)バックアップコピーの必要なプロ    グラム及びデータの範囲,並びにバッ    クアップコピーの更新頻度及び保存条    件に関すること   (オ)担当者の取扱い範囲の指定に関す    る事項   オ 各段階の責任者及び担当者の職名又   は氏名  (3)システムの変更   ア 製造業者は,システム変更基準書を   作成するものとし,原則として次の事項   を記載するものとする。   (ア)変更の申請と承認の手続き   (イ)変更後のシステムの検証に関する    事項   (ウ)運用管理に関する手順書の変更に    関する事項   (エ)変更内容の関係者への周知方法   (オ)責任者及び担当者の職名又は氏名   イ システム稼動後のプログラム変更を   伴うシステムの変更については,原則と   して「第3 開発業務」の「2.システム   設計段階」から「5.設置・運用テスト段   階」までの規定を準用するものとする。 2.ハードウェアの操作  (1) 責任者は,運用管理手順書に定められ  た標準操作手順に基づき,担当者にハード  ウェアを操作させるものとする。  (2) 責任者は,運用管理手順書に基づき,  担当者に対して教育を行うものとする。 3.保守点検事項の実施  (1) 担当者は,運用管理手順書に基づき,  保守点検を実施し,その結果を記録するも  のとする。  (2) 責任者は,保守点検の記録により保守  点検管理が適切に行われていることを確認  するものとする。 4.事故発生時の対応  (1) 責任者は,システムに事故が発生した  場合には,担当者に運用管理手順書に基づ  き,速やかに適切な対応措置をとらせると  ともに,その原因究明を行わせ,必要な再  発防止措置をとらせるものとする。  (2) 責任者は,事故発生後に運転を再開す  る場合には,運用管理手順書に基づき,復  帰稼動が適切に行われていることを確認す  るものとする。  (3) 責任者は,担当者にシステムの事故に  ついて,次の事項を記録させること。   ア 事故の内容及び結果   イ 事故原因究明の経過に関する記録及   び再発防止措置の内容   ウ 責任者の確認結果  (4) 責任者は,事故発生時に手動バックア  ップシステムにより操作する場合には,運  用管理手順書に基づき適切に行わせるもの  とする。 5.セキュリティ管理の実施  (1) 責任者は,運用管理手順書に基づき,  ハードウェア設置場所への立入制限を行う  ものとする。  (2) 責任者は,運用管理手順書に基づき,  データの入力,修正,削除等を行うことの  できる担当者を指定し,不正アクセスの防  止措置を講じるものとする。  (3) 責任者は,運用管理手順書に基づき,  パスワード及び識別コードの取扱いについ  て,機密保護を図るものとする。  (4) 担当者は,運用管理手順書に基づき,  バックアップコピーを作成し,保存するも  のとする。 6.自己点検の実施  (1) 製造業者は,責任者にシステムがこの  ガイドラインに基づき,運用管理されてい  ることを定期的に確認させるものとする。  (2) 責任者は,自己点検の結果を記録する  ものとする。  第5 文書(このガイドラインに定める計  画書9手順書等をいう。以下同じ。)及び記  録の保存管理   責任者は,このガイドラインに基づき作  成された文書及び記録を,次により適切に  保存管理するものとする。  (1) 保存方法   保存方法は,次のいずれかの方法による  ものとする。   ア 書面   イ 磁気等の記録媒体。ただし,次の事   項を遵守すること。    (ア)文書及び記録のバックアップコピ     ーを作成し,保存すること。    (イ)責任者が,文書及び記録の作成時     又は変更時に,適切な方法により確認     又は記録を行うこと。  (2) 保存場所   文書及び開発段階の記録は,原則として,  製造所ごとに保存するものとする。ただし,  すべての文書を主たる施設において,統括  して保存し,かつ,各製造所が,それぞれ  当該製造所に係る部分の写しを保存する場  合には、この限りではない。  (3) 保存期間   ア 文書及び開発段階の記録の保存期間   は,当該システムの運用が廃止された曰   から3年間(当該記録に係る医薬品に関   して有効期間の記載が義務づけられてい   る場合には,その有効期間に1年を加算   した期間)とする。   イ 運用管理の記録は,記録の日から3   年間(当該記録に係る医薬品に関して有   効期間の記載が義務づけられている場合   には,その有効期間に1年を加算した期   間)保存するものとする。 第6 適用の時期  このガイドラインは,平成5年4月1日か ら適用する。ただし,同日において開発済み 又は開発中のシステムについては,「第3 開 発業務」の規定を適用しない。