○GLPチェックリストについて
(平成元年五月一〇日)
(薬審一第一三号)
(各都道府県衛生主管部(局)長あて厚生省薬務局審査第一・審査第二・生物製剤課長連名通知)
医薬品の安全性試験の実施に関する基準(昭和五七年三月三一日薬発第三一三号薬務局長通知別添。以 下「GLP」という。)の適用を受ける試験施設に対する査察を実施するためのGLPチェックリストについては、昭和六一年一一月一日薬審一第六○号 審査 第一課長、審査第二課長、生物製剤課長通知「医薬品の安全性試験の実施に関する基準に係るチェックリストについて」により通知したところであるが、昭和六 三年一○月五日薬発第八七○号薬務局長通知「医薬品GLP及び査察に関する規定の改正について」の施行に伴い、別添のとおり改正したので、御了知のうえ、 貴管下関係業者に対し周知願いたい。
なお、この通知の施行に伴い、昭和六一年一一月一日薬審一第六○号 審査第一課長、審査第二課長、生物製剤課長通知は廃止する。

別添
GLPチェックリスト
〔1〕 組織・職員
目的‥試験施設が適切にして十分な人材を有しており、またGLP基準に沿つた試験が行われるように組織されているかを調査する。
1 試験施設全体の組織とGLP試験の組織との関係について調べる。
2 試験施設全体の組織と信頼性保証部門の組織との関係を調べる。
3 運営管理者の氏名、職名、履歴および運営管理者がいかにして試験施設全体の活動状況を把握しているかを調べる。
4 試験責任者、信頼性保証部門及び資料等の保管責任者の指定の方法を調べる。
5 試験施設は業務の遂行に十分な数の職員(主として試験従事者)を有しているかを調べる。
6 試験従事者の履歴、職務経験について調べ、さらに試験従事者の職務遂行のための教育訓練の実施状況、記録の保管について調べる。
7 試験の信頼性に好ましくない影響を与えると考えられる健康上の問題が、試験従事者に発生した場合の対処方法およびその記録を調べる。
8 完了した試験について、次の事項を確認する。
1) 試験責任者、試験従事者の履歴、職務経験、教育訓練等の記録
2) 試験計画書に記載された試験の役割を適切に実施できたかを判断するために、主な試験従事者の業務担当量を調べる。
〔2〕 信頼性保証部門
目的‥信頼性保証部門の機構と機能、およびそれが運営管理者に対しGLP基準に従つた試験の実施を保証しているかを調査する。
1 信頼性保証部門の組織および職員の氏名、職名、履歴について調べる。
2 査察(再査察も含む)の立案、実施および報告、勧告の手順について調べる。
3 試験、試験施設および最終報告書の査察方法について調べる。
4 申請資料中のデータが、最終報告書と内容的に異なるものでないことを確認する方法および確認の記録について調べる。
5 完了した試験について、次の事項を調べる。
1) 試験の査察を行つた信頼性保証部門の職員の氏名
2) 主計画表、試験計画書及び標準操作手順書の写しの保管
3) 試験、試験施設および最終報告書の査察(再査察も含む)が実施され、その内容および結果が記録され、運営管理者、試験責任者に報告(勧告も含む)されていること。
〔3〕 施設
目的‥施設が適切であり、試験がGLP基準に従つて実施しうるものであることを調査する。
1 試験施設の規模と設計が、そこで実施されている試験の種類に適したものであることを調べる。
2 分離または隔離が必要とされる室あるいは区域について、使用目的に対応した分離または隔離がなされているかを調べる。
3 動物飼育室、動物用品供給場所、被験物質および対照物質保管区域、試験操作区域、バイオハザード対応を含む特殊試験区域など重要な区域の環境制御およびその監視手順について調べる。
〔4〕 機器
目的‥試験施設は試験を実施するのに適切かつ十分な機器を有していること、および機器は信頼できる結果を得られるように、点検、保守等の管理が行われていることを調査する。
1 機器が、試験を実施するのに適切な設計と十分な処理能力を有していることを調べる。
2 機器が適切に配置されていることを調べる。
3 機器の点検、保守、校正等の管理について調べる。
4 完了した試験に使用した機器の代表例について、次の事項について調べる。
1) 標準操作手順書
2) 機器の点検、保守、校正等の方法と記録
3) 機器の故障と修理を行つた記録、および故障が試験に支障をきたさなかつたかどうか
〔5〕 試薬
目的‥試薬および溶液が適切にラベルされ、保管されていることを調査する。
1 試薬等の容器には名称のほか、試薬等の性質、使用目的からみて適切な表示(濃度、保管条件、使用期限など)がなされているかを点検する。
2 適切に保管されていることを点検する。
〔6〕 標準操作手順書
目的‥試験施設に、実施した試験に関連する標準操作手順書が備えられているかを調査する。
1 標準操作手順書が、用いられる各試験区域で利用できる状態にあることを点検する。
2 次の操作について、標準操作手順書が定められているかを点検する。
1) 被験物質および対照物質の受領、表示、保管、取扱い、媒体との混合、サンプリング
2) 動物飼育施設の整備および動物飼育管理
3) 設備および機器の維持および修理
4) 実験動物の識別、収容、配置および移動並びに群分け
5) 実験動物の一般症状などの観察
6) 試験の操作、測定、検査および分析
7) 瀕死または死亡動物の取扱い
8) 動物の剖検または死後解剖検査
9) 標本の採取および識別
10) 病理組織学的検査
11) データの取扱い、保管および検索
12) 信頼性保証の業務
13) 試験の信頼性の保証等の観点からの試験従事者の健康管理等に関する事項
3 標準操作手順書の作成、改訂が承認され、その日付が明記されているかを点検する。
〔7〕 動物の飼育管理
目的‥動物の飼育および管理が、試験の目的または実施に支障を来さないように、適切に行われていることを調査する。
1 動物の受領、検収、検疫(馴化)および隔離の方法について調べる。
2 疾病動物の取扱について調べる。
3 動物の個体識別およびケージ等への表示の方法について調べる。
4 動物が種別に分離収容されていることを調べる。
5 同一飼育室で異なる試験が行われている場合、適切な区分および識別がなされていることを調べる。
6 飼育施設、動物用品等の衛生的な管理の方法について調べる。
7 動物用品(主として飼料)の保管管理について調べる。
8 廃棄物の衛生的な処理の方法について調べる。
9 完了した試験について、次の事項が試験計画書または標準操作手順書に従つて実施されたことを記録によつて調べる。
1) 動物の発注、受領、動物種、供給源、数、年齢など
2) 動物の検収、検疫、馴化
3) 試験前、試験中に生じた疾病および死亡動物の取扱い(診断、隔離、処置)(該当する場合)
4) 動物の環境条件‥ケージ、床敷の交換、温度、湿度など
5) 飼料、水、床敷のコンタミナントの分析(該当する場合)
6) 試験の支障を来すような洗剤または殺虫剤の使用(該当する場合)
〔8〕 被験物質と対照物質
目的‥試験計画書に指定された被験物質等が、指定された投与量で試験系に投与されることを保証するための手順を調査する。
1 被験物質等の配布、受領、保管、取扱い、表示および返却に関する手順が、設定されているかを調べる。
2 被験物質等と媒体との混合物の表示、保管、配布および処分に関する手順が、設定されているかを調べる。
3 被験物質等の汚染および品質低下を防止する手順が、定められているかを調べる。
4 完了した試験について、次の事項を調べる。
1) 被験物質等の名称とロット、およびこれらの物質を規定する特性(同一性、含量または力価、純度、組成等)に関する記録
2) 被験物質等の受領、使用および返却または廃棄した記録を調べ、これらが整合していること
3) 被験物質等の安定性に関する記録
4) 被験物質等を媒体と混合して使用する場合には、混合物中での被験物質等の安定性を測定した記録および混合の正確さ、混合物中の均一性を測定した記録
5) 四週間以上にわたる試験の場合には、被験物質等のロットごとのサンプルが保存されていること
〔9〕 試験計画書および試験の実施
目的‥試験計画書および試験の実施がGLPの基準に従つているかを調査する。
1 試験計画書がどのように作成され、承認され、変更されているかについて調べる。
2 完了した試験について、次の事項を調べる。
1) 試験計画書が試験の実施に先立ち作成され、承認されていること
2) 試験計画書には、GLP基準の第二五条第一項にいう項目が含まれていること
3) 試験が試験計画書および標準操作手順書に従つて行われたこと
4) 試験計画書の変更がなされた場合、その記録が作成され、試験責任者の承認を受けていること
5) 標準操作手順書からの逸脱があつた場合、生データ中に記録され、試験責任者の承認を受けていること
6) 試験計画書に指示されたデータがすべて記録されていること
7) 生データの記録およびその変更が、GLP基準に従つて行われていること
8) 標本の表示が適切に行われていること
9) 試験中に起きた異常あるいは予期しえなかつた現象の記録およびとられた処置
〔10〕 報告および記録
目的‥最終報告書がGLP基準に従つて作成されていること、および記録、標本などが適切に保管されていることを調査する。
1 資料保管施設の配置について調べる。
2 資料保管施設への出入りの管理方法について調べる。
3 保管資料の管理方法について調べる。(搬出入、検索法、劣化対策、廃棄、保管期間など)。
4 完了した試験について、次の事項を調べる。
1) 最終報告書が作成され、試験責任者の署名または捺印がなされていること
2) 最終報告書には、GLP基準第二七条第一項にいう項目が含まれていること
3) 最終報告書の訂正または追加が、明確にされ、試験責任者によつて確認されていること(該当する場合)
4) 最終報告書が生データを正確に反映していること
5) 試験の信頼性に悪影響を及ぼす疑いのある予期しえなかつた事態および試験計画書からの逸脱が、最終報告書に記載されていること
6) 試験計画書、標本、生データ、記録文書および最終報告書が、資料保管施設に保管されていること
〔11〕 試験業務の外部委託
目的‥試験業務を外部に委託する場合、委託手続きがGLP基準に従つて行われていることを調査する。
1 試験業務の外部委託の手順について調査する。
2 完了した試験について、記録により確認する。
〔12〕 GLPにおけるコンピューター査察
別紙のうち、該当する事項。

別紙
GLPにおけるコンピューター査察
〔1〕 コンピューターハードウェアおよびコンピューター室
目的‥ホストコンピューターが適切な条件で適切に配置されていることを調査する。
1 ホストコンピューターが、適切な条件下に設置されていることを調べる。
1) 建物の立地、構造等
2) 電子計算機室の配置、構造内装、設備等
3) 空気調和装置
2 ホストコンピューター室が、許可された者のみ出入りできるよう管理されていることを調べる。
3 磁気記録媒体中のデータを生データとする場合、データを保管する室およびデータの保管管理が、第二八条の規定を満たしていることを調べる。
〔2〕 コンピューターシステムの開発
目的‥コンピューターシステムが、適切な設計と十分な処理能力を有するように開発されたことを確認する。
A ソフトウェアを自社で開発した場合
1 開発時の要員の作業規範となる文書および開発時の要員管理に関する文書があり、それに従つて開発作業が行われたことを調べる。
2 ハードウェア、ソフトウェアの仕様をまとめた文書について、次の事項を調べる。
1) コンピューターにより直接データを記録するシステムにおいては、GLP上必要な次の機能が含まれていること。
ア) 〔4〕1のア)〜エ)を記録すること。
イ) コンピューターの磁気媒体中のデータを変更する場合、最初の記録事項を残すとともに、変更の理由および日付並びにそのデータの入力者を記録すること。
ウ) 資格確認、アクセス制御。
エ) データのインテグリティ管理。
2) ユーザー部門の要求仕様を満たしていること。
3) 現行のハードウェアの仕様と一致すること。
4) ハードウェア、ソフトウェアの変更毎に改訂されてきたこと。
3 プログラムに関する文書について、次の事項を調べる。
1) プログラム作成者の職務経験と資格。
2) 個々のプログラムの仕様をまとめた資料(ソースコードを含む)が作成されており、その内容が別のプログラム作成者に理解出来る内容であること。
4 プログラムのテストに関する文書について、次の事項を調べる。
1) プログラムのテスト計画書、テスト結果およびそれらの照査、承認の記録があること。
2) コンピューターシステムに組み込んだ機能について、プログラムのテストの記録があること。
5 コンピューターシステムの据え付け(移行)時における、システムの仕様および作動の確認について、次の事項を調べる。
1) 仕様および作動の確認のための、テスト計画書、テスト結果、およびそれらの照査、承認の記録があること。
2) 発生した問題がすべて処理されそれが記録されていること。
6 以上の記録・文書がバリデーションの文書として体系的に整理、保管され、コンピューターシステムの信頼性が評価され承認されていることを確認する。
B 市販のソフトウェアを購入して開発した場合
1 コンピューターシステムの仕様書があること。およびコンピューターにより直接データを記録するシステムにおいては、GLP上必要な次の機能が含まれていることを調べる。
ア) 〔4〕1のア)〜エ)を記録すること。
イ) コンピューターの磁気媒体中のデータを変更する場合、最初の記録事項を残すとともに、変更の理由および日付並びにそのデータの入力者を記録すること。
ウ) 資格確認、アクセス制御。
エ) データのインテグリティ管理。
2 ソフトウェアを開発したメーカーから、ソフトウェアの信頼性を裏付ける次の情報を入手していることを確認する。
1) 開発手順が〔2〕のAに準じて行われていることを確認しうる情報。
2) ソフトウェアを導入している他のユーザーについての情報。
3) ソフトウェアの開発時におけるテスト結果等の確認記録。
3 コンピューターシステムの据え付け時における、システムの仕様および作動の確認について、次の事項を調べる。
1) 仕様および作動の確認のためのテスト計画書、記録、テスト結果およびそれらの照査、承認の記録があること。
2) 発生した問題がすべて処理され、それが記録されていること。
4 市販のソフトウェアを一部変更した場合、ソフトウェア変更の手順に従つて行われていること。また、変更したソフトウェアについて〔2〕のAにいう記録があることを調べる。
5 市販のソフトウェアに加えて、一部のソフトウェアを自社開発した場合には、〔2〕のAにいう記録があることを調べる。
6 以上の記録、文書がバリデーションの文書として体系的に整理、保管され、コンピューターシステムの信頼性が評価され承認されていることを調べる。
C 既存のコンピューターシステムの場合(開発時に〔2〕のAまたはBに従つて行わなかつたシステム)
1 コンピューターシステムが、仕様通りに機能していることを、開発および運用時の稼働実績の記録によつて、後追いで確認していることを調べる。
2 コンピューターシステムの信頼性を確認するために、Cの1による確認を補足して行つたテスト計画、記録、照査、承認の記録を調べる。
3 以上の記録、文書が、レトロスペクティブバリデーションの文書として、体系的に整理、保管されており、コンピューターシステムの信頼性が評価され承認されていることを確認する。
〔3〕 コンピューターシステムの運用管理
目的‥コンピューターシステムが、設計された通り正しく稼働するように運用管理されていることを調査する。
1 コンピューターシステムの運用管理の責任者および管理体制が定められていることを調べる。
2 コンピューターシステムの機能を確保しうるように、点検、保守、テスト等の方法およびスケジュールが定められており、それに従つて実施されていることを調べる。
3 ソフトウェアの変更が、生データの変更と同じ手順により行われるように定められていること。また、それに従つて実施されていることを調べる。
4 ハードウェア、ソフトウェアを変更した場合、変更に係わる部分について〔2〕のAにいう記録がとられていることを確認する。
5 使用中のソフトウェアについて、次の事項が行われていることを調べる。
1) プログラムとマスターコピーとの照合。
2) マスターおよびバックアップコピーの保管。
3) 使用中のソフトウェアが、最新版であることの確認。
6 システムの事故および障害が発生したときの処置の手順が確立していること、および、それに従つて記録され、解決されていることを確認する。
7 ソフトウェアおよび試験データのセキュリティ管理について、次の事項を調べる。
1) 試験従事者、試験責任者、コンピューターシステムの運用者、信頼性保証部門、運営管理者等が、ソフトウェアの作成、変更および試験データの収集、変更、確認等の作業のうち、いずれを行いうるかの資格が決められ、運営管理者の承認を受けていること。
2) ソフトウェア(変更も含む)が運営管理者によつて承認されていること。
8 ソフトウェアが変更された場合、関連する標準操作手順書が改訂されていることを確認する。
9 コンピューターシステムの標準操作手順書、運用管理に関する手順書があることを調べる。
10 前記1〜7に関する記録、文書が定期的に総合的に照査され、コンピューターシステムの信頼性が評価されていることを確認する。
〔4〕 コンピューターにより直接データを記録する場合、データのGLP適合性の査察
目的‥コンピューターシステムによるデータ処理が、GLPに適合していることを調査する。
1 生データ例を調べ、それが、GLP基準にいう生データの条件を満たしていることを確認する。
生データの条件とは、データがそれに対応する次の記録を伴つていること。
ア) 試験毎の固有の識別、試験操作の種類。
イ) 被験物質、投与群、♂♀、動物の個体、臓器など。
ウ) データの入力者、入力日、必要に応じて時刻。
エ) 使用機器(データ収集端末)。
2 生データの変更の記録について調べ、それがGLP基準にいう変更の条件を満たしていることを確認する。
変更記録の条件とは、データがそれに対応する次の記録を伴つていること。
ア) 変更前のデータ(データおよび前記1ア)からエ)の情報)
イ) 変更したデータについて変更の理由、日付、変更者
ウ) 使用機器(データ収集端末)
〔5〕 信頼性保証部門によるコンピューターシステムの査察
目的‥信頼性保証部門が、コンピューターシステムを査察し、システムがGLPに適合するよう設計され、設計通りの機能を有するように開発されたこと、および作動していることを確認していることを調査する。
1 信頼性保証部門によるコンピューターシステムの査察の手順書があることを調べる。
2 コンピューターシステムが、信頼性保証部門の査察を可能にする機能を備えていること、また、信頼性保証部門が独自に使用できる端末を持つていることを調べる。
3 信頼性保証部門が、コンピューターシステムの開発についてその全過程を査察し、記録していることを確認すること。
4 信頼性保証部門が、コンピューターシステムの運用管理について、定期的に査察し、記録していることを調べる。
5 信頼性保証部門が、コンピューターシステムによるデータ処理の信頼性を、定期的に査察し、記録していることを調べる。
〔6〕 査察対象試験に係るデータを処理したコンピューターシステムが、更新等によりもはや稼働していない場合には、そのコンピューターシステムについて保管されている文書・記録により、〔1〕から〔5〕に関する確認または調査を行う。
特に、コンピューターの磁気媒体を生データとしている場合、〔4〕にいう調査により、査察対象試験に係る生データを取り出し得ることを確認する。